伝統の三河花火(12)ー岡崎を中心に、その歴史と見方ー


  打ち上げ花火の名前と見方(1)

 花火大会で鑑賞する花火は、打ち上げと仕掛け
が主である。 
 仕掛け花火は、組み立てた木枠に、滝や建造物
といった絵や文字を赤、青、緑の光で描く。(ラ
ンス」という色火薬を詰めた細い筒をセットして
速火線で連絡しておく。花火師は色や形の組み合
わせや、火の回りに注意している。
 何といっても、花火の王様は「打ち上げ花火」
(割物)である。打ち上げ花火には「ポカ物」と
「割物(わりもの)」がある。
 ポカ物は玉皮が薄くつくってあり、上空で皮が
合わせ目に沿って二つにポカッと割れるものをい
う。玉の中に旗やクルマなどを入れて空高く飛ば
し、ふわふわと流すものが「施物」「袋物」であ
る。ポカ物にはもう一つ、良く知られているもの
が「音物」で、祭や運動会の開始を告げる「号砲
(ごうほう)」「雷(らい)」である。
 花火師が伝統技術をフルに使い、心血を注いで
つくるのが「割物」で、一発一発が評価される。
一般に「打ち上げ花火」と言えば、この「割物」
を指している。
 割物には一発ごとに名前がつけられる。名前の
つけ方には一定のルールがあり、星(花弁)が中
心から尾を引いて広がるものを「菊(きく)」と
か「引(ひき)」という。尾を引かず、星がパッ
と開くものを「牡丹(ぼたん)」と呼んでいる。
花の中心に芯(しん)があると「芯」の文字が入
る。
 例えば「緑芯紅牡丹(みどりしんべにぽたん)」
と言えば、玉が上空で炸裂すると、尾を引かない
紅色の花(牡丹)が開き、中心に緑の芯が浮き上
がる。花弁ぐらいまで芯の星が広がって行くもの
を「丁字(ちょうじ)」といっている。
 また「引先紅銀乱(ひきさきべにぎんらん)」
とあれぱ、尾を引いて星が広がり、広がった先が
紅色に変化し、その後、銀色に乱れて、キラキラ
と光って潤える。
 「変」は文字通り変化することで、「錦」は金
色、消える寸前に花弁の先がピカッと光って消え
ることを「露(つゆ)」とか「光露(こうろ)」
という。花弁の先が一斉に音を響かせて消えるこ
とを「先割(さきわれ)」とか「郡声(ぐんせい)」
と呼ぶ。
 そこで「錦牡丹先青光露(にしきぽたんさきあ
おこうろ)」とあれば、黄金(錦)色をした牡丹
を広げ、先が青色に変化し、消える寸前に花弁の
先がピカッと光って消える。
「浮模様(うきもよう)」は、大きく開いた花弁
の上に、小さい花(子どもの玉)が浮き出すもの
である。
 玉が発射されて、上空で炸裂するまでを「昇
(のぼり)」といい、上昇中に開く小さな花を
「尾花(おぱな)」と呼ぶ。上昇中のこうした
工夫を「曲導付」とか「曲付」といっている。
 「昇尾花付銀芯紅菊(のぼりおぱなつきぎん
しんべにぎく)」と言えぱ、上空に昇るまでに
次々と小さな花(小割)が開き、炸裂すると芯
が銀色に光り、尾を引いて紅色の花か開く。
 以上が名前のつけ方の大略である。
玉の名称を見て、打ち上がる花火の変化を見る
のも一興である。
 また、打ち上がった花火の変化に、自分で名前
をつけてみるのも、なかなか楽しい。
 新作花火は、花火師が命名することが多い。 
 

 八重芯変化菊(割物)

 松島の月(ポカ物)

  

 

 

 

 


 

         戻る