伝統の三河花火(13)ー岡崎を中心に、その歴史と見方ー


  打ち上げ花火の名前と見方(2)

 打ち上げ花火は、玉が発射されて上昇し、最高
の所で割薬に点火して炸裂するのが一番美しい。
上昇中に開げば星は全部上を向いて飛ぴ、下降に
入ると星は下を向いて飛んで”おちょぼ傘”にな
ってしまう。
 親導(玉を開かせるための導火線)の寸法が大
切である。この上昇と下降の境を「玉の坐(すわ)
り」という。玉が上昇して炸裂すると星に火がつ
き、一斉に四方八方に飛び散るが、これを「割口
(わりくち)」といっている。星一つ一つが均一
で丹念に詰められていないと、真球形のきれいな
割口にならない。
 花火は下から見るが、横からも見る。どこから
見ても真ん丸に見える。この開いた形のことを花
火の「盆(ぼん)」という。玉皮と割薬の強さが
合っていないと均整のとれた盆にはならない。
玉の坐り、割口、盆は三位一体のものである。
飛ぶはずの星が飛ばない「抜け星」、一つ二つの
星がふらふらと「泳ぐ」ようでは、完全な盆が開
いたとは言えない。
 「星」には何色かの色火剤が重ねてあるから何
百と飛び散る星(花弁)が同時に光り、同時に色
を変化させ、一時に火の粉一つ残さずに消えるよ
うに、花火師は細心の注意を傾けてつくる。「変
化」と「消え口」によって、強烈な印象と余韻を
残す。
 花火の魅力は、色と形と音にある。花火師は自
分の持つ技術をフルに活用して、新しい試みに情
熱を注いでいるのである。
  
 木の末に遠く花火の開きけり

正岡子規

−おわり−

 玉に星を詰めた状態。
星が等間隔に詰めてある
(リング状の割物)

 

  

輪星(リング) 
上の写真の玉が開花したときの現象 

 

 各種玉
左から4号、10号、3号、5号
制作 加藤煙火(株) 

 

 

 

 


 

         戻る