1、星の構造について
打ち上げ玉の基本は「星」です。日本の花火の特徴として球状であることと星が変化することです。今回は、この星についてご説明いたします。
この星は、牡丹系の星になります。左の図から切り星、掛け星、抜き星、
抜き星は牡丹の星には不向きです。
基本的に変化星の構造は、右の図の通りです。これは菊先紅緑の星で、外側から、早粉(着火剤)、引剤(薪の火の粉に似た感じ)、色火(紅)、色火(緑)となっており、外側の早粉に着火して順番に中の方に燃えていき色が変わるわけです。
きれいに開く玉でもこの星一つ一つの大きさが揃っていないと歯切れのよい変化はしません。「掛け星」による方法で芯の部分からしっかり大きさを整えるのですが、どのように揃えるのか知っていますか?なんと「ふるい」を使っていくのです。少しずつ大きな篩にかけながら徐々に整えていきます。
芯の部分で1日かけて、後は1日に2,3mmずつ大きくしていきます。当然1回ごとに乾燥作業が入りますので、5号玉の星を仕上げるのに2週間ぐらいは掛かるでしょう。
変化菊の星ですが、左が引先紅緑、右が引先緑紅です。
見てお分かりだとは思いますが、中心の部分が入れ替わっているだけです。1の早粉(着火剤)は玉が開いた瞬間に燃え尽きてしまい、2が菊の花弁の部分を形成し、先で瞬間に色が変化するのです。
この変化は、5号玉で2.5秒ぐらいでしょうか。
この図は、横軸を時間として変化を現したものです。
上が引き先紅緑、下が引き先緑紅です。
1,早粉の部分
2,引き剤が燃えている部分
3,変化の1回目の部分
4,変化の2回目の部分
上の右図は、牡丹系の星と柳系の星の燃焼時間の差です。上が牡丹系で下が柳系です。上の左図は星の断面図です。全く見た目には変わりません。
同じ星の大きさでも配合や星のしめ方(掛け方)で星の燃焼時間が変わり現象も変わってきます。燃焼を遅くしたものが「柳」です。皆さんがとてもお気に入りの「しだれ柳」は「錦冠柳」といいます。
多少牡丹ものより弱く玉を割り、しかも燃焼時間が2倍以上遅いので「しだれ」になるのです。
玉の大きさによって星の大きさは変わってきます。下の表は玉の大きさに対する星の大きさです。あくまでも参考にしてください。花火屋さんによっては、配合の違いや割薬の強さ、切り星か掛け星の違いによって多少大きさが変わってきますし、基準は星が飛んだときに垂れない程度の大きさです。
割ものの星は、下記の表の値に近いのですが、「椰子」と呼ばれるものは一般に「抜き星」なので円柱形で花火屋さんによってはだいぶ大きさが変わっています。体積は大体同じ何ですが、直径はだいぶ違います。太く大きく見せるための工夫がされています。中に使われている原料で「チタン合金」というものがありますが、その粒度によっても開いたときの火の粉の幅が違ってきますので、バランスが非常に難しいものの一つです。
玉の大きさ | 2.5号 | 3号 | 4号 | 5号 | 6号 | 7号 | 8号 | 10号 |
親星 | 9.3mm | 10.4mm | 12.0mm | 14.3mm | 15.8mm | 17.5mm | 18.0mm | 22.0mm |
芯星 | 8mm | 9mm | 10mm | 12mm | 14mm |
あと変わった「型物」はこれとはまた別に大きさを調整しています。
「復輪」と言われる玉がありますが、たとえば5号玉で菊物のように詰めますが1列だけ6号の星を詰めます。そうすると玉が開いたとき5号玉の菊物現象になりますが、その星が消えたあと6号玉の星がまだ燃えていて輪星の状態が残ります。
また絵型の場合、玉の最大の断面積は決まっているので、描く物によって大きさを変えています。この場合詰めやすさから切り星を使用する事があります。
星の大きさと、割薬の強さは、試行錯誤の末決めたものです。経験の結果です。